○岑參の詩を、『題苜蓿峰寄家人』詩からずっと訳し続けている。これまでどれくらい、訳したか。気になったので、数えてみた。
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『白雪歌送武判官歸京』詩 ぁ愾論邱塋送封大夫出師西征』詩
ァ慘愨羃諒送封大夫出師西征』詩 Α惴寃料旦使赴河隴』詩
А惷夢愆鹹弘騨臺蹇抻蹇 ´─憊柯臧彷貿点膤歌六首・其一』詩
『獻封大夫破播仙凱歌六首・其二』詩 『獻封大夫破播仙凱歌六首・其三』詩
『獻封大夫破播仙凱歌六首・其四』詩 『獻封大夫破播仙凱歌六首・其五』詩
『獻封大夫破播仙凱歌六首・其六』詩 『寄左省杜拾遺』詩
『送人還京』詩 亜愾判官赴磧西』詩
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魁愿亳鄴城』詩 粥愽詼鳴軼攝思家』詩
㉑『韋員外家花樹歌』詩 ㉒『送張子尉南海』詩
㉓『暮春虢州東亭送李司馬帰扶風別廬』詩 ㉔の『和賈至舎人早朝大明宮之作』詩
○岑參には、まだまだ佳詩が幾らでもあるのだが、そろそろ終わりとしたい。それで、最後に、岑參の『與高適薛據同登慈恩寺浮圖』詩で締めたい。
【原文】
與高適薛據同登慈恩寺浮圖
岑參
塔勢如湧出, 孤高聳天宮。 登臨出世界, 磴道盤虚空。
突兀壓州, 崢如鬼工。 四角礙白日, 七層摩蒼穹。
下窺指高鳥, 俯聽聞驚風。 連山若波濤, 奔走似朝東。
松夾馳道, 宮觀何玲瓏。 秋色從西來, 蒼然滿關中。
五陵北原上, 萬古濛濛。 淨理了可悟, 勝因夙所宗。
誓將挂冠去, 覺道資無窮。
【書き下し文】
高適と薛據と同に慈恩寺の浮圖に登る
岑參
塔勢は、湧出するが如く、 孤高して、天宮に聳ゆ。
登臨すれば、世界を出で、 磴道は、虚空に盤る。
突兀として、神州を壓し、 崢として、鬼工の如し。
四角は、白日を礙り、 七層の、蒼穹を摩す。
下窺して、高鳥を指し、 俯聽して、驚風を聞く。
連山は、波濤の若く、 奔走して、東に朝するに似たり。
青松は、馳道を夾み、 宮觀の、何ぞ玲瓏たる。
秋色は、西より來たり、 蒼然として、關中に滿つ。
五陵は、北原の上、 萬古の、青濛濛たり。
淨理は、了に悟るべし、 勝因の、夙に宗とする所。
誓ひて將に冠を挂けて去り、 覺道、無窮に資せんとす。
【我が儘勝手な私訳】
高適・薛拠とともに、長安の大慈恩寺の大雁塔に登る
岑參
大慈恩寺の大雁塔は、自然に地面から生え出したように、
ただ一つ厳かに、空に向かって聳え立っている。
大雁塔に登れば、まるで別世界を眺めることができ、
大雁塔の階段は、空へ向かって螺旋状に続いている。
高く突き出ていて、都長安でも群を抜いて高く、
高く険しいさまは、とても人間わざとは思えない出来栄えである。
大雁塔の四隅は、太陽を支えるくらい高く、
大雁塔の七重の塔は、青い空まで続いているかのようである。
大雁塔から下を見て、高い空を飛んでいる鳥を指さし、
大雁塔からうつむいて耳をすませば、激しい風音が聞こえてくる。
遠くの連なり続いている山々は、まるで大きな波のように、
あたかも東に向かって、勢いよく流れ去るかのように思える。
青い松の巨木が、宮城へと続く大道の両脇に植えられていて、
その先に、宮殿がなんと整然と立ち並んでいることか。
都長安では、秋の気配は、西の方から訪れるのであって、
古色蒼然とした雰囲気が、関中平原全体に満ち満ちようとしている。
漢の五陵は、都長安の北原、咸陽にあって、
紀元前の大昔から今に至るまで、鬱蒼として存在し続けている。
佛様の清浄な教えは、何時でも悟ることができる、
佛様との因縁も、ずっと前から心懸けていることである。
今すぐ、官を辞して出家して、
正覚への大道を行い、悟りの一助とすることを誓いたい。
○最近では、2015年8月9日、2017年5月16日、2017年10月21日と、西安を訪れているが、大慈恩寺大雁塔へ出掛けたのは、2015年8月9日が最後である。
○大雁塔を最初に訪れたのは、今から30年ほど昔の話である。当時は、大雁塔に登ることもできた。周囲には、何も無い広場の只中に、大雁塔は寂しく建って居た。今では信じられない光景である。
○岑參の『與高適薛據同登慈恩寺浮圖』詩は、何とも壮大な詩である。しかも、この作品は、岑参、高適、杜甫、储光羲、薛據の五人の連作だと言うのだから、何とも凄い。ただ、薛據の作品は、散失してしまっているけれども。
○できれば、高適、杜甫、储光羲の作品も併せて、見てみたい。