○滕王閣を彩る文学は、決して、王勃の「秋日登洪府滕王閣餞別序」だけでは無い。しかし、あまりに王勃の「秋日登洪府滕王閣餞別序」が喧伝され、広く知られている結果、滕王閣と言えば、万人が王勃の「秋日登洪府滕王閣餞別序」を挙げる。
○また、王勃の「秋日登洪府滕王閣餞別序」は、そういう万人の思いに十分応えるだけの内容がある。加えて、夭折の詩人、王勃の絶唱と来れば、一層、衆目を集める。そう言う意味では、王勃の「秋日登洪府滕王閣餞別序」は、空前絶後の作品と言うしかない。
○それでも、多くの文人たちが滕王閣を訪れ、滕王閣を詠じていることも間違いの無いことである。ただ、他の著名な楼閣と違って、滕王閣で王勃に挑戦しようとか、張り合おうとする詩人は皆無である。滕王閣では、王勃に挑戦することは出来ない。相撲で言えば、同じ土俵に立てないのである。
○それほど、王勃の「秋日登洪府滕王閣餞別序」は、膨大なセッティングが施され、莫大な仕掛けと時間が費やされて創作された作品となっている。賢明な詩人であれば、滕王閣で王勃と張り合うことは出来ないことを、誰もが理解している。
○それでも、滕王閣を訪れた文人たちの作品は数多い。これまで、本ブログでは、ブログ『王勃:滕王閣序』を皮切りに、前回のブログ『正倉院宝物:王勃詩序』まで、10回に亘って王勃の「秋日登洪府滕王閣餞別序」について、論じてきた。これ以上、滕王閣を彩る文学を案内することも出来ない。ここには、滕王閣を彩る文学として、張九齢「登城楼望西山作」詩と、白居易「鐘陵餞送」詩の原文のみを案内するに留めたい。二作品とも、機会があれば、紹介したい佳詩である。
登城楼望西山作
張九齢
城樓枕南浦,日夕顧西山。
宛宛鸞鶴處,高高煙霧間。
仙井今猶在,洪久不還。
金編莫我授,羽駕亦難攀。
簷際千峰出,雲中一鳥。
縱觀窮水國,游思遍人寰。
勿復塵埃事,歸來且閉關。
鐘陵餞送
白居易
翠幕紅筵高在雲
歌鐘一曲萬家聞
路人指點滕王閣
看送忠州白使君
○長々と、王勃の「秋日登洪府滕王閣餞別序」について論じて来たが、これで一応終わりとしたい。次回から、再び「南岳・武漢・南昌・南京・揚州旅行」の話に戻りたい。次回は、いよいよ南京の話になる。