○硫黄島が大物主大神と大山祇の故郷であるとの話をし、続けて、前回は蔵王権現の話をした。蔵王権現は修験道の本尊とされる仏様である。それも蔵王権現は日本で誕生した珍しい仏様でもある。
○前回、修験道については、ある程度、触れたが、ウィキペディアフリー百科事典の説明には、
・蔵王権現(ざおうごんげん)は、日本独自の山嶽仏教である修験道の本尊である。
とか、
・日本古来の山岳信仰が仏教に取り入れられた日本独特の宗教である。
・密教などの要素も加味されて確立した日本独特の宗教が、修験道である。
と、殊更に修験道が日本オリジナルの宗教であることが強調されている。
○本当にそうなのか。古来、そのように称されて来たから、それを踏襲して、そういうふうに述べられているように思えてならない。誰もそういうことをきちんと検証して、そのように表現しているわけではあるまい。何回か、中国浙江省舟山群島普陀山に参詣しているうちに、そんなことが気になった。
●中国には『中国四大仏教名山』と言う考え方があって、仏教聖地として知られる。
中国四大仏教名山
中国四大仏教名山(ちゅうごく しだい ぶっきょう めいざん)は、中国で用いられる、四ヶ所の著名
な仏教名山・霊山・聖山に対する呼び名である。
・山西省五台県の五台山(世界遺産) - 文殊菩薩の霊場
・四川省峨眉山市の峨眉山(世界遺産) - 普賢菩薩の霊場
・安徽省青陽県の九華山 - 地蔵菩薩の霊場
・浙江省舟山市の普陀山 - 観音菩薩の霊場
ただし、普陀山は実際には山ではなく島である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%9B%9B%E5%A4%A7%E4%BB%8F%E6%95%99%E5%90%8D%E5%B1%B1
●また、中国には五岳の思想もある。
五岳
中国の道教の聖地である5つの山の総称。五名山とも呼ばれる。陰陽五行説に基づき、木行=東、火
行=南、土行=中、金行=西、水行=北 の各方位に位置する、5つの山が聖山とされる。
・東岳泰山(山東省泰安市泰山区)(世界遺産)
・南岳衡山(湖南省衡陽市南嶽区)
・中岳嵩山(河南省鄭州市登封市)(世界遺産)
・西岳華山(陝西省渭南市華陰市)
・北岳恒山(山西省大同市渾源県)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E5%B2%B3
●神仏混淆が日本では日本オリジナルのものとして認識されている。それを私たちは当たり前のこととして受け入れている。多くの人にとって、それほど宗教に関心があるわけでもないし、それ程、宗教に深入りしたくない感情もあったりして、神仏混淆の話をされても、そんなものかと思うしかない。
●これまで、実際、中国四大仏教名山や、中国の五岳を全て参詣してみて判ったことだが、神仏混淆は決して日本オリジナルの宗教では無いと言うことである。中国四大仏教名山である、五台山・峨眉山・九華山・普陀山や、中国五岳である、泰山・衡山・嵩山・華山・恒山など、すべてが神仏混淆の山であることが確認された。これまでは本で読んだり、人から聞いた話だったが、数年かけて、五台山・峨眉山・九華山・普陀山と、泰山・衡山・嵩山・華山・恒山と、その全てに参詣してきた。
●ほかにも、盧山や黄山、天台山、それに五山である径山寺・霊隠寺・天童寺・浄慈寺・阿育王寺にも、全て参拝済みである。そうやって、中国各地の仏教聖蹟や道教の道観などに参詣してみると、中国のこういう聖地は全てが神仏混淆であることに驚く。
◎これらのことは、実際に現地へ出掛けてみて確かめて来たことであるから、間違えようがない。最初気になったのは中国浙江省舟山群島普陀山であった。その普陀山は、観音信仰の聖地として知られる。その普陀山の開山が日本人だと言うのが中国の通説であることを知る日本人は少ない。
◎そのことは、中国の検索エンジン百度の「百度百科」でも、確認することができる。
普陀山 (中国佛教四大名山之一)
普陀山,与山西五台山、四川峨眉山、安徽九华山并称为中国佛教四大名山,是观世音菩萨教化众生
的道场。普陀山是舟山群岛1390个岛屿中的一个小岛,形似苍龙卧海,面积近13平方公里,与舟山群岛
的沈家门隔海相望,素有“海天佛国”、“南海圣境”之称,是首批国家重点风景名胜区。2007年(丁
亥年)5月8日,舟山市普陀山风景名胜区,经国家旅游局正式批准,为国家5A级旅游风景区。“海上有
仙山,山在虚无缥缈间”,普陀山以其神奇、神圣、神秘,成为驰誉中外的旅游胜地。普陀山是国务院
首批公布的44个国家级重点风景名胜区之一,中国国家5A级旅游景区,全国文明山、卫生山,浙江省唯
一的ISO14000国家示范区。
【历史沿革】
普陀山是全国著名的观音道场,其宗教活动可溯于秦。原始道教及仙人炼丹遗迹随处可觅。唐大中元
年(公元847年)有梵僧来谒潮音洞,感应观音化身,为说妙法,灵迹始着。唐咸通四年(公元863年)
日僧慧锷大师从五台山请观音像乘船归国,舟至莲花洋遭遇风浪,数番前行无法如愿,遂信观音不肯东
渡,乃留圣像于潮音洞侧供奉,故称“不肯去观音”。后经历代兴建,寺院林立。鼎盛时期全山共有4大
寺、106庵、139茅蓬,4654余僧侣,史称“震旦第一佛国”。
http://baike.baidu.com/item/%E6%99%AE%E9%99%80%E5%B1%B1/6618?fr=aladdin
◎ただ、普陀山を何度も訪れていると、恵萼が普陀山の開山であることはあり得ないことが判る。恵萼は九世紀の僧であるのに対し、普陀山の歴史は、それよりもずっと古いからである。おそらく、恵萼は普陀山中興の祖なのではないかと思われる。
◎硫黄島に起源を持つ仏教が神仏混淆の宗教であることの意義は大きいと言わざるを得ない。これまで案内してきているように、大物主大神や大山祇、蔵王権現などの神様仏様が硫黄島に起源を有することは、これらの神々や仏様が神仏混淆であることの証でもある。
◎日本の神道も仏教も、本来、神仏混淆の宗教であることを見逃してはなるまい。それは、仏教が日本に伝来した当初から神仏混淆の宗教であったことが判る。何故なら、硫黄島より早く日本に仏教が伝来することは考えられないからである。
◎現在、日本の仏教伝来は六世紀の欽明天皇期、百済からだとされる。しかし、本当の仏教伝来は、そうではあるまい。日本への仏教伝来は、三世紀に、中国本土から直接、日本へもたらされた。それは最初から神仏混淆の宗教であった。中国浙江省舟山群島普陀山を何度も訪れていると、そういうことを感じる。