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邪馬台国はどこにある?古代ミステリーを楽しもう:前編

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○昨日、2017年7月4日(火)午後0時から、たまたまテレビを見ていたら、「先人たちの底力 知恵泉▽邪馬台国はどこにある?古代ミステリーを楽しもう・前編」と言う番組があって、驚いた。NHK教育テレビである。それは再放送で、番組自体は先週6月27日(火)午後10時から放送されたものであった。

○『邪馬台国はどこにある?古代ミステリーを楽しもう』とは、なかなかの番組である。それも前編後編と2回に渡って放送されると言うのだから、相当本格的な番組だろうと大いに期待した。何しろ、天下のNHK、それも教育テレビの番組だと言うのだから、期待しないほうがおかしい。

○番組を観て、感想を述べると、完全にがっかりさせられたというしかない。『邪馬台国はどこにある?古代ミステリーを楽しもう』と言いながら、その話はまるで虚妄の説と言うしかない。まず、真剣に邪馬台国探索をしようとする姿勢が全く感じられないことに驚いた。楽しむには、相応の努力が必要だろう。何もしないで、ただ、人の珍説を羅列すれば良いとする番組制作態度に、驚き呆れた。少なくとも、この番組は教育テレビの番組ではないし、天下のNHKも地に落ちたとするしかない。

●NHKが完全に誤解しているから、此処で述べるけれども、考古学者先生に邪馬台国を語らせたところで、それは何の役にも立たない。考古学者先生は邪馬台国に関して全くの素人に過ぎない。その素人が専門外の邪馬台国を盛んに喧伝して止まない。それが現代の邪馬台国論である。

●テレビでは、考古学者先生がさも専門家面して邪馬台国について盛んにお話なさっていた。それはもう茶番と言うしかない。そういう茶番を天下のNHK、それも教育テレビの番組で流してはいけない。そういうことに、NHK関係者が誰も気付かないと言うのに驚く。

●よくよく考えて欲しいのだが、邪馬台国や卑弥呼は、中国の正史である「三国志」に書かれた史実である。本当に邪馬台国や卑弥呼に言及しようとするなら、真剣に「三国志」を読むしかないわけである。そんなこともNHKは理解していない。

●何故か、NHKの番組では「三国志」がまるで放擲されたままとなっている。邪馬台国や卑弥呼が「三国志」に記録されているものである以上、「三国志」を無視して邪馬台国や卑弥呼を語ることは誰にもできない。そんなことは小学生でも判る。

●中国の史書の難しさは尋常ではない。もともと中国の史書は中国の専門史家のみを読者対象としている。だから、基本的に日本人など、その読者対象ですらない。まず、素人に中国の史書が読みこなせることはあり得ない。それが常識である。少なくとも史家であれば、そのことは誰でも理解している。

●それがどんなことか。専門の史家に素晴らしい言葉があるので、それを紹介したい。
   このように『史記』においては何よりも、本文の意味の解明を先立てなければならないが、これは
  古典の場合已むを得ない。古典の解釈は多かれ少なかれ謎解きであって、正に著者との知恵比べであ
  る。そしてこの謎解きに失敗すれば、すっかり著者に馬鹿にされて了って、本文はまっとうな意味を
  伝えてくれないのである。             (「宮崎市定全集5 史記」自跋)

●宮崎市定が邪馬台国に一切言及しなかった話は有名である。宮崎市定ほどの史家でさえ、読めないのが「三国志」なのである。それが素人に読めるはずが無かろう。

◎ところが、素人は怖い。怖いもの知らずで、勇猛果敢に「三国志」に猪突猛進なさるならまだ許せるが、「三国志」を完全無視して邪馬台国を語ろうとなさる。そして、邪馬台国が畿内だとか、北九州だとか発言なさる。挙句の果てには、邪馬台国四国説とか沖縄説まで唱えなさる。それはもう、笑うしか無い話である。

◎天下のNHK、それも教育テレビの番組でそういうことを流して何になるのだろうか。『古代ミステリーを楽しもう』と言うのは、真面目な話であって欲しい。お笑い番組と錯覚するようなものを平気で流している感覚を疑う。

◎「三国志」を編纂した陳壽と言う史家は、稀代の天才である。中国四千年の歴史でも、司馬遷と陳壽が双璧ではないか。そんな陳壽は中国では大変尊敬されている。ところが、日本ではそうではない。陳壽の「三国志」の表現に問題があると言って憚らない。何とも恐れ多い話である。

◎要するに、日本人の能力の低さ、読解力の無さが原因であることは間違いない。何しろ三世紀に書かれた「三国志」を二十一世紀の現代になっても読み解くことができないのだから。「三国志」を書いた陳壽がどれくらい恐ろしい男であるかは、「三国志」を読むと判る。

◎「三国志」の『魏書・巻三十・烏丸鮮卑東夷伝・倭人の条』を、日本では特別に「魏志倭人伝」と呼び称している。『魏書・巻三十』は全9426字で書かれている。その中には9国が出現するが、その最後に出現するのが倭人条である。つまり、「三国志」の魏書の最後を飾る巻が巻三十なのである。

◎だから、「魏志倭人伝」だけ読んだところで、話は分からない。せめて『魏書・巻三十・烏丸鮮卑東夷伝』くらいは読んで欲しい。「魏志倭人伝」の字数は1984字である。「魏志倭人伝」には三つの序文が存在する。そんなことも理解しない人は、到底、邪馬台国を語る資格さえない。

◎その「魏志倭人伝」の主題は何か。「魏志倭人伝」の主題くらい案内できないでは、とても、「魏志倭人伝」を読んだとはいえまい。「魏志倭人伝」の主題は倭国三十国の案内にある。それは次のように案内される。
  【渡海三国】
    ・狗邪韓国・対馬国・壱岐国
  【北九州四国】
    ・末廬国・伊都国・奴国・不弥国
  【中九州二十国】
    ・斯馬国・巳百支国・伊邪国・都支国・邇奴国・好古都国・不呼国
    ・姐奴国・対蘇国・蘇奴国・呼邑国・華奴蘇奴国・鬼国・為吾国・
    ・鬼奴国・邪馬国・躬臣国・巴利国・支惟国・烏奴国・(奴国)
  【南九州三国】
    ・投馬国・邪馬台国・狗奴国

◎コロンブスの卵では無いけれども、何時誰が何処で「魏志倭人伝」を読んでも、「魏志倭人伝」の主題はこうなる。それが理解できない人は「魏志倭人伝」が読めていないと言うことになる。ただ、これまで、こういうふうに「魏志倭人伝」を読んだ人は居ない。








番組内容
古代史“最大”の謎、邪馬台国のミステリーを題材に、歴史の楽しみ方の知恵を探る。九州説、畿内説、四国説、さらには沖縄にある卑弥呼の海底神殿まで、想像の翼を広げる。




○インターネットで探したら、NHK番組案内に、「知恵泉」があって、『先人たちの底力 知恵泉▽邪馬台国はどこにある?古代ミステリーを楽しもう・前編』の紹介に、次のようにあった。

   古代史“最大”の謎、邪馬台国のミステリーを題材に、歴史の楽しみ方の知恵を探る。九州説、畿
  内説、四国説、さらには沖縄にある卑弥呼の海底神殿まで、想像の翼を広げる。
   歴史が苦手という3代目店主の二宮アナが、歴史の楽しみ方の知恵を、古代史のミステリー邪馬台国
  探しから味わう。「邪馬台国はどこにあるのか?」邪馬台国の名は「魏志倭人伝」にしか登場せず、
  圧倒的な史料不足が謎解明の最大のネックなのだが、実はそのことこそが、逆にさまざまな妄想を膨
  らませる余地を生みロマンをかきたてる魅力となっている。先人たちの妄想と最新の研究成果を盛り
  込んで、歴史の楽しみ方のだいご味を味わう。
  http://www4.nhk.or.jp/chieizu/x/2017-06-27/31/2699/1494153/

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