○前回、「魏志倭人伝」を読まないで邪馬台国や卑弥呼を語ることが如何に無駄であるかについて話した。また、「魏志倭人伝」をものした陳壽がどんなに偉大な史家であるかについても、述べたつもりである。陳壽は大の日本贔屓である。何しろ三世紀に1986字もの字数を費やして、丁寧に日本のことを記録してくれているのだから。
○私たち日本人は、陳壽に感謝してもし切れないほどの恩恵を蒙っている。そういう意味で、陳壽をしっかり理解することが大事であることは言うまでもない。陳壽が30歳の時、蜀国が滅びるなど、結構大変な生涯を送っている。
○陳壽(233~297)が書いた「三国志」は、あくまで私撰であって、正史として認められたのは遥か後世の唐の太宗(598~649)の時代だとされる。そういう「三国志」の性格もしっかり認識しておく必要があろう。
○意外に、そういうことが問題とされない。それに陳壽の書いた「三国志」には、14世紀になってから、羅貫中と言う絶大な愛読者が出現し、「三国志演義」を書いて、それが大流行してしまった。日本ではそれが「三国志」として喧伝されたため、誤解している人も多い。
●ここでは、「魏志倭人伝」が記録する倭国を再度紹介しておきたい。最初に「魏志倭人伝」の主題である倭国三十国の案内から。「魏志倭人伝」を読むと、三世紀の倭国三十国が次のように案内されている。
【渡海三国】
・狗邪韓国・対馬国・壱岐国
【北九州四国】
・末廬国・伊都国・奴国・不弥国
【中九州二十国】
・斯馬国・巳百支国・伊邪国・都支国・邇奴国・好古都国・不呼国
・姐奴国・対蘇国・蘇奴国・呼邑国・華奴蘇奴国・鬼国・為吾国・
・鬼奴国・邪馬国・躬臣国・巴利国・支惟国・烏奴国・(奴国)
【南九州三国】
・投馬国・邪馬台国・狗奴国
●このように案内するのは簡単だが、これを「魏志倭人伝」から読み解くのは至難の業と言うしかない。何しろ、三世紀に「魏志倭人伝」が書かれて以来、「魏志倭人伝」を読んで、主題である倭国三十国の案内を紹介出来た人は誰も居ないのだから。それ程、「魏志倭人伝」を読むことは難しい。
●それは、もともと中国の史書は中国の専門史家のみをその読者対象としているからである。つまり、中国人であっても、中国の史書は読めない。それが常識である。中国では、そのことがよく理解されている。だから、史書を普通の人が読もうとはしない。読んでも判らないからである。
●ところが日本はまるで違う。全くの素人が堂々と「魏志倭人伝」を読んだと平気でおっしゃる。そして、堂々と出版までなさる。まさに笑止千万とはこういうことを言うのだろう。しかし、ご本人は至って真剣、真面目そのものだから、もっと始末が悪い。子供なら諫めることもできるが、大の大人に面と向かってそういうことも憚られる。
◎「魏志倭人伝」を読んで、上記した「魏志倭人伝」の主題が理解されないようでは、到底、「魏志倭人伝」が読めているとは思えない。作者である陳壽が「魏志倭人伝」で何を最も表現したかったか。それが「魏志倭人伝」の主題と言うことである。どう考えても、倭国三十国以外には考えられない。
◎それに、陳壽は、帯方郡から邪馬台国までの道程を、次のように案内してみせる。
∥喨刈狗邪韓國=七千餘里
狗邪韓國→對馬國=千餘里
U馬國→一大國=千餘里
ぐ貘舖□末盧國=千餘里
ニ犀□伊都國=五百里
Π謀墺□奴國=百里
奴國→不彌國=百里
不彌國→投馬國=千五百余里
投馬國→邪馬壹國=八百余里
◎この表現も、簡単なようだが、これを「魏志倭人伝」から読み解くことはなかなか難しい。それは不彌國から投馬國までの距離が『千五百余里』であり、投馬國から邪馬壹國までの距離が『八百余里』だとするところである。原文にはそれぞれ「水行二十日」と「水行十日、陸行一月」と書いてある。
◎もっと難しいのは、「魏志倭人伝」の、
・計其道里、當在會稽、東冶之東。
であり、同じく、
・所有無與儋耳、硃崖同。
と言う表現だろう。これを解決するのに数年は十分要する。それだけの時間を掛けて読むのが「魏志倭人伝」なのである。
◎それに、
・計其道里、當在會稽、東冶之東。
・所有無與儋耳、硃崖同。
の記事は、日本で幾ら「魏志倭人伝」を読んだところで解決しない。これらを理解するには中国で「魏志倭人伝」を読むしかない。
◎当古代文化研究所では、これまで寧波へ5回訪問している。同じように、越国の都であった会稽(現在の紹興市)にも4回訪問している。上記の記事を読み解くには、寧波か会稽で「魏志倭人伝」を読まない限り、理解されない。何故なら、「魏志倭人伝」を書いた陳壽が中国人だからである。
◎『計其道里、當在會稽、東冶之東』については、以下のブログを参照されたい。
・書庫「日向国の邪馬台国」:ブログ『會稽東冶之東』
https://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/40187569.html
◎同じように、『所有無與儋耳、硃崖同』については、以下のブログを参照されたい。
・書庫「日向国の邪馬台国」:ブログ『所有無與儋耳硃崖同』
https://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/40189365.html
○私たち日本人は、陳壽に感謝してもし切れないほどの恩恵を蒙っている。そういう意味で、陳壽をしっかり理解することが大事であることは言うまでもない。陳壽が30歳の時、蜀国が滅びるなど、結構大変な生涯を送っている。
○陳壽(233~297)が書いた「三国志」は、あくまで私撰であって、正史として認められたのは遥か後世の唐の太宗(598~649)の時代だとされる。そういう「三国志」の性格もしっかり認識しておく必要があろう。
○意外に、そういうことが問題とされない。それに陳壽の書いた「三国志」には、14世紀になってから、羅貫中と言う絶大な愛読者が出現し、「三国志演義」を書いて、それが大流行してしまった。日本ではそれが「三国志」として喧伝されたため、誤解している人も多い。
●ここでは、「魏志倭人伝」が記録する倭国を再度紹介しておきたい。最初に「魏志倭人伝」の主題である倭国三十国の案内から。「魏志倭人伝」を読むと、三世紀の倭国三十国が次のように案内されている。
【渡海三国】
・狗邪韓国・対馬国・壱岐国
【北九州四国】
・末廬国・伊都国・奴国・不弥国
【中九州二十国】
・斯馬国・巳百支国・伊邪国・都支国・邇奴国・好古都国・不呼国
・姐奴国・対蘇国・蘇奴国・呼邑国・華奴蘇奴国・鬼国・為吾国・
・鬼奴国・邪馬国・躬臣国・巴利国・支惟国・烏奴国・(奴国)
【南九州三国】
・投馬国・邪馬台国・狗奴国
●このように案内するのは簡単だが、これを「魏志倭人伝」から読み解くのは至難の業と言うしかない。何しろ、三世紀に「魏志倭人伝」が書かれて以来、「魏志倭人伝」を読んで、主題である倭国三十国の案内を紹介出来た人は誰も居ないのだから。それ程、「魏志倭人伝」を読むことは難しい。
●それは、もともと中国の史書は中国の専門史家のみをその読者対象としているからである。つまり、中国人であっても、中国の史書は読めない。それが常識である。中国では、そのことがよく理解されている。だから、史書を普通の人が読もうとはしない。読んでも判らないからである。
●ところが日本はまるで違う。全くの素人が堂々と「魏志倭人伝」を読んだと平気でおっしゃる。そして、堂々と出版までなさる。まさに笑止千万とはこういうことを言うのだろう。しかし、ご本人は至って真剣、真面目そのものだから、もっと始末が悪い。子供なら諫めることもできるが、大の大人に面と向かってそういうことも憚られる。
◎「魏志倭人伝」を読んで、上記した「魏志倭人伝」の主題が理解されないようでは、到底、「魏志倭人伝」が読めているとは思えない。作者である陳壽が「魏志倭人伝」で何を最も表現したかったか。それが「魏志倭人伝」の主題と言うことである。どう考えても、倭国三十国以外には考えられない。
◎それに、陳壽は、帯方郡から邪馬台国までの道程を、次のように案内してみせる。
∥喨刈狗邪韓國=七千餘里
狗邪韓國→對馬國=千餘里
U馬國→一大國=千餘里
ぐ貘舖□末盧國=千餘里
ニ犀□伊都國=五百里
Π謀墺□奴國=百里
奴國→不彌國=百里
不彌國→投馬國=千五百余里
投馬國→邪馬壹國=八百余里
◎この表現も、簡単なようだが、これを「魏志倭人伝」から読み解くことはなかなか難しい。それは不彌國から投馬國までの距離が『千五百余里』であり、投馬國から邪馬壹國までの距離が『八百余里』だとするところである。原文にはそれぞれ「水行二十日」と「水行十日、陸行一月」と書いてある。
◎もっと難しいのは、「魏志倭人伝」の、
・計其道里、當在會稽、東冶之東。
であり、同じく、
・所有無與儋耳、硃崖同。
と言う表現だろう。これを解決するのに数年は十分要する。それだけの時間を掛けて読むのが「魏志倭人伝」なのである。
◎それに、
・計其道里、當在會稽、東冶之東。
・所有無與儋耳、硃崖同。
の記事は、日本で幾ら「魏志倭人伝」を読んだところで解決しない。これらを理解するには中国で「魏志倭人伝」を読むしかない。
◎当古代文化研究所では、これまで寧波へ5回訪問している。同じように、越国の都であった会稽(現在の紹興市)にも4回訪問している。上記の記事を読み解くには、寧波か会稽で「魏志倭人伝」を読まない限り、理解されない。何故なら、「魏志倭人伝」を書いた陳壽が中国人だからである。
◎『計其道里、當在會稽、東冶之東』については、以下のブログを参照されたい。
・書庫「日向国の邪馬台国」:ブログ『會稽東冶之東』
https://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/40187569.html
◎同じように、『所有無與儋耳、硃崖同』については、以下のブログを参照されたい。
・書庫「日向国の邪馬台国」:ブログ『所有無與儋耳硃崖同』
https://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/40189365.html