○立春に寄せて。羅隠の『京中正月七日立春』詩、張九齡の『立春日晨起對積雪』、韓愈の『春雪』詩、韋莊の『立春』詩、張軾の『立春偶成』詩、朱淑貞の『立春』詩と続けている。今回案内するのは、陸游の『立春日』詩である。
【原文】
立春日
陸游
江花江水每年同
春日春盤放手空
天地無私生萬物
山林有處著衰翁
牛趨死地身無罪
梅發京華信不通
數片飛飛猶臘雪
村鄰相喚賀年豐
【書き下し文】
立春日
陸游
江花江水は、年毎に同じなるを、
春日の春盤は、手を放れて空なり。
天地は無私にして、萬物を生じ、
山林の有る處、衰翁を著わす。
牛は死地に趨るも、身は無罪、
梅は京華に發するも、信は不通。
數片の飛飛するは、猶ほ臘雪のごとし、
村鄰相喚びて、年豐を賀す。
【我が儘勝手な私訳】
水辺に咲く花も川の流れも、去年も今年も全く同じなのに、
立春日に食べる春巻きは、今年は誰も食べさせてくれない。
自然は無為自然に、春になると全てのものが出現し、
山の賑わいは、私に老年を自覚させずにはおかない。
打春の牛は死に向かって走るも、罪にも問われないし、
梅花は都に咲き乱れているにも拘らず、その香りはまるで通じない。
白いものが飛来するのは、ちょうど臘日の雪のようだと、
隣村同士の村人が大声で叫びながら、今年の豊作を祝っている。