○これまで、『陌上桑』詩を次のように見て来た。
¥綏(漢楽府诗)
陌上桑(曹操詩作)
o綏(魏文帝曹丕詩)
わ綏(魏國曹植詩)
ワ綏(呉均詩作)
陌上桑(王筠詩作)
○今回案内するのは、王台卿詩作の『陌上桑』である。中国の検索エンジン百度の百度百科は、王台卿詩作の『陌上桑』について、次のように案内する。
陌上桑 (王台卿诗作)
《古今乐录》曰:“《陌上桑》歌瑟调。古辞《艳歌罗敷行》、《日出东南隅篇》。”
【作品全文】
令月开和景,处处动春心。
挂筐须叶满,息惓重枝阴。
https://baike.baidu.com/item/陌上桑/22515908#viewPageContent
○天下の『百度百科』なのに、王台卿詩作の『陌上桑』をこのように案内している。しかし、王台卿詩作の『陌上桑』は連作であって、上記の詩は、其の五に過ぎない。其の一から其の四は、完全に欠落している。
○加えて、『百度百科』の「陌上桑 (王台卿诗作)」の注釈は、王筠詩作の『陌上桑』の注釈であって、王台卿詩作の『陌上桑』とは何の関係も無いものが掲載されている。迂闊と言うにもほどがある。早急に訂正されることを願って止まない。
○そういうことが判ったのは、『百度百科』の「王台卿」項目が、王台卿の代表作を載せていて、そこに『陌上桑』が存在したからである。中国でも、王台卿は遠い存在となっているらしく、かの雄弁な『百度百科』ですら、記述が僅か一行しかない。
王台卿
王台卿,中国南北朝时期梁国诗人,代表作《南浦别佳人》《陌 上 桑》等。
https://baike.baidu.com/item/王台卿/14730278?fr=aladdin
○ちなみに、王台卿詩作の『陌上桑』全文は、次の通り。
陌上桑
王台卿
郁郁陌上桑,盈盈道傍女。送君上河梁,拭泪不能语。
郁郁陌上桑,遥遥山下蹊。君去戍万里,妾来守空闺。
郁郁陌上桑,皎皎云间月。非无巧笑姿,皓齿为谁发。
郁郁陌上桑,袅袅机头丝。君行亦宜返,今夕是何时。
令月开和景,处处动春心。挂筐须叶满,息倦重枝阴。
○ここでは、王台卿詩作の『陌上桑』を二回に分けて案内したい。今回は其の一から其の二まで。
【原文】
陌上桑(其一)
王台卿
郁郁陌上桑
盈盈道傍女
送君上河梁
拭淚不能語
【書き下し文】
陌上の桑(其一)
王台卿
郁郁たる陌上の桑、
盈盈たる道傍の女。
君を送る、河梁の上、
涙を拭くも、語ること能はず。
【我が儘勝手な私訳】
青々と生い茂っている畦道の上の桑の木、
娘盛りの道端で悲しみに暮れる若い女性。
娘は今、夫が出陣するのを川の橋の上で見送ろうとしている、
幾ら涙を拭いたところで、涙は溢れるばかりで、話すことも儘ならない。
【原文】
陌上桑(其二)
王台卿
郁郁陌上桑
遙遙山下蹊
君去戍萬里
妾來守空閨
【書き下し文】
陌上の桑(其二)
王台卿
郁郁たる陌上の桑、
遙遙たる山下の蹊。
君は去り萬里を戍り、
妾は來て空閨を守る。
【我が儘勝手な私訳】
青々と生い茂っている畦道の上の桑の木、
何処までも長く続いている山沿いの小道。
夫は出陣して、遥か遠く国境を守り、
私は故郷に一人寂しく、家を守っている。