○高適の詩案内を続けているが、今回は高適の『送鄭侍御謫閩中』である。
【原文】
送鄭侍御謫閩中
高適
謫去君無恨
閩中我舊過
大都秋雁少
只是夜猿多
東路雲山合
南天瘴癘和
自当逢雨露
行矣慎風波
【書き下し文】
鄭侍御の閩中に謫せらるるを送る
高適
謫せられて去る、君に恨み無からん、
閩中は我れ舊に過ぎたり。
大都は秋に雁少なく、
只だ是れ夜に猿の多し。
東路は雲山の合し、
南天は瘴癘の和す。
自づから当に雨露に逢ふべし、
行けや、風波を慎めに。
【我が儘勝手な私訳】
左遷されて辺境の地に向かう、君に人を恨む気持などあるまい、
流謫地である閩中の町は、私も昔に通ったことがある。
だいたい、閩中の町は南方だから、秋に訪れる雁も少なく、
ただ、夜中に鳴く猿の声ばかりが多いところだ。
これから君が向かう閩中への道程は、東の雲と山との遥か遠方に在って、
南方の閩中の地には、恐ろしい熱病や流行病が満ち満ちている。
しかし君のことだから、閩中へ住めば、当然、雨露の恩恵を受けるに違いない。
だから、安心して行きたまえ、そして侍御として閩中の町に安全と平穏をもたらしてほしい。