○高適の詩案内を続けているが、今回は高適の『使清夷軍入居庸』詩である。
【原文】
使清夷軍入居庸
高適
匹馬行将久
征途去轉難
不知邊地別
祇訝客衣單
溪冷泉聲苦
山空木葉乾
莫言關塞極
雨雪尚漫漫
【書き下し文】
清夷軍に使ひして居庸に入る
高適
匹馬、行くゆく将に夕べならんとす、
征途、去ること転た難し。
辺地の別なるを知らず、
祇だ客衣の単えなるを訝かる。
渓は冷ややかにして泉声苦しみ、
山は空しくして木葉乾けり。
言ふ莫かれ、関塞極まれりと、
雨雪、尚ほ漫漫たり。
【我が儘勝手な私訳】
一匹の馬を伴った旅は、今日もまた一日が終わろうとしている、
旅路は進むにつれて、しだいに困難の度合を増して行くばかりだ。
辺境の地が内地と全然違うことを理解しない私が、
たった一枚の薄着であることに土地の人々は驚き呆れる。
谷間に入ると冷え冷えとして、谷川は音を立てて流れ、
山には人気もなくて、ただ乾燥した落葉が一面を占めている。
此処、居庸へ着いたからと言って、辺塞への旅は終わりではない、
目的地の清夷軍までは、雨雪に苦しむ旅路がまだまだ続いているのだ。