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杜審言:贈蘇味道

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○高適の詩を32首ほど案内した。その中で、気になった作品が幾つか存在する。前回は王維の『靈雲池送從弟』詩を紹介したが、今回は、杜審言の『贈蘇味道』詩である。

  【原文】
      贈蘇味道
          杜審言
    北地寒應苦,南庭戍未歸。
    邊聲亂羌笛,朔氣卷戎衣。
    雨雪關山暗,風霜草木稀。
    胡兵戰欲盡,漢卒尚重圍。
    雲淨妖星落,秋深塞馬肥。
    據鞍雄劍動,插筆羽書飛。
    輿駕還京邑,朋游滿帝畿。
    方期來獻凱,歌舞共春輝。

  【書き下し文】
      蘇味道に贈る
          杜審言
    北地は寒く、應に苦しむべく、
    南庭の戍は、未だ歸らず。
    邊聲は羌笛の亂れ、
    朔氣は戎衣を巻く。
    雨雪に關山は暗く、
    風霜に草木は稀なり。
    胡兵は戰ひを盡くさんことを欲すれば、
    漢卒は尚ほ重圍す。
    雲淨くして、妖星落ち、
    秋深くして、塞馬肥ゆ。
    鞍に拠れば、雄剣動き、
    筆を揺るがせば、羽書飛ぶ。
    輿駕の京邑に還れば、
    朋游は帝畿に滿つ。
    方に期の來たりて凱を獻じ、
    歌舞して共に春輝せん。

  【我が儘勝手な私訳】
    北の地は当然寒いし、当然難儀するに違いない、
    匈奴を守る兵は、いまだに帰ってこない。
    国境付近ではさかんに羌笛が鳴り響き、
    寒さは毛皮の服を着ていても寒いほどである。
    雨や雪に覆われて国境の山は薄暗く、
    風や霜が強いので草木もほとんど生えない。
    匈奴は死ぬまで戦う人々であるから、
    漢軍はただ遠くから匈奴を見守るしかない。
    空はあくまで清浄なのに、唐突に不吉な星が出現するし、
    秋が深まるにつれて、軍馬も次第に元気を増して来る。
    馬に乗れば、兵士は自然と剣を操りたいことを希求し、
    筆を取れば、書記官は立派な軍書を書くことを願う。
    輿や馬車が国境から都に帰って来たら、
    友との交遊は都の周辺に満ち満ちるに違いない。
    まさに君がそういうふうに凱旋する時を願って、
    その時には、歌舞宴会を催し、一緒に春を謳歌したいものだ。

○もちろん、この詩が「天高く馬肥ゆる秋」の由来である。誰もがそういうことは知っているが、実際、この詩がどういうものであるかは知らない。何とも寂しい話であるから、ここに案内しておきたい。

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