○陳子昂の『薊丘覽古贈盧居士藏用七首(並序)』、『登幽州臺歌』詩と見てきているが、陳子昂には連作『感遇詩三十八首』と言う大作があると言う。とても全部を案内できるものではないが、その幾つかを紹介したい。
○今回は、陳子昂『感遇詩三十八首』詩の其卅五を、案内したい。
【原文】
感遇詩三十八首:其卅五
陳子昂
本為貴公子,平生實愛才。
感時思報國,拔劍起蒿萊。
西馳丁零塞,北上單于台。
登山見千里,懷古心悠哉。
誰言未忘禍,磨滅成塵埃。
【書き下し文】
感遇詩三十八首:其卅五
陳子昂
本は貴公子為り、
平生は實に才を愛す。
時に感じては報國を思ひ、
劍を抜きては蒿萊を起こす。
西は丁零塞に馳せ、
北は單于台に上る。
山に登り千里を見、
古を懷しんで心は悠なる哉。
誰か言はん、未だ禍を忘れず、
磨滅して塵埃と成るまで。
【我が儘勝手な私訳】
もともと貴公子であるからして、
普段から大変生まれつきの才能を大事にしている。
時節の変動に応じて国への忠誠を思い、
武器を取っては、争乱を平定しようとする。
西の彼方、匈奴丁零族の砦まで馬を走らせ、
北は匈奴の王が居る單于台に上る。
山に登っては、千里の彼方を望めるし、
昔を懐かしむと、ゆったりとした心持ちになれる。
誰かの言葉にあった、人は何時まで経っても身の不幸を忘れることはない、
死んで、灰となるまで。