○陳子昂の『薊丘覽古贈盧居士藏用七首(並序)』、『登幽州臺歌』詩と見てきているが、陳子昂には連作『感遇詩三十八首』と言う大作があると言う。とても全部を案内できるものではないが、その幾つかを紹介したい。
○今回は、陳子昂『感遇詩三十八首』詩の其卅七を、案内したい。
【原文】
感遇詩三十八首:其卅七
陳子昂
朝入雲中郡,北望單于台。
胡秦何密邇,沙朔氣雄哉。
藉藉天驕子,猖狂已復來。
塞垣無名將,亭堠空崔嵬。
咄嗟吾何嘆,邊人涂草萊。
【書き下し文】
感遇詩三十八首:其卅七
陳子昂
朝に、雲中郡へ入り、
北に、單于台を望む。
胡秦の何ぞ密邇ならんや、
沙朔の氣の雄なるかな。
藉藉とした天驕子、
猖狂として已に復た來る。
塞垣に名將無く、
亭堠は空しく崔嵬し。
咄嗟、吾れ何をか嘆かん、
邊人は草萊を涂く。
【我が儘勝手な私訳】
朝に、雲中郡(呼和浩特市付近)へ入り、
北の、單于台を遥かに望み見る。
ここでは胡秦が何とも密着していることか、
また、北方の砂漠の何と雄大であることか。
紛乱とした匈奴の王は、
猛り狂ってもうすでにそこまで再びやって来ている。
城塞に今はもう名立たる大将も居ないし、
物見櫓はただ虚しく高く聳えているばかりである。
嗚呼、私は此処で、何を嘆くと言うのか、
辺塞の人は、今は城塞の雑草を取り除いている。