○陳子昂の詩を案内し続けているが、今回は、陳子昂の『度荊門望楚』詩である。
【原文】
度荊門望楚
陳子昂
遙遙去巫峽
望望下章台
巴國山川盡
荊門煙霧開
城分蒼野外
樹斷白雲隈
今日狂歌客
誰知入楚來
【書き下し文】
荊門を度り楚を望む
陳子昂
遙遙と巫峽を去れば、
望望と章台へと下る。
巴國の山川の盡き、
荊門の煙霧の開く。
城は蒼野の外を分かち、
樹は白雲の隈を斷つ。
今日、狂歌の客、
誰か知る楚に來り入るに。
【我が儘勝手な私訳】
巫峽から、遥々と狭い長江の急流を下ってくると、
広々とした、春秋時代、楚國の離宮であった章華台に至る。
何処までも続く巴国の山川が、ようやく終わりを告げ、
荊門山が煙霧の中に浮かんでいるのを見る。
城壁が青々とした田畑と人の住むところとを区分し、
山々が白雲の彼方に視界を遮っている。
春秋時代に、楚國には陸通と言う隱士が居たが、
今の世に、一体、どれほどの人が接輿を知っていると言うのか。