○中国の検索エンジン百度百科が載せる「九華山」項目に、『歴代題詠』があって、その中に、李白等「改九子山為九華山聯句並序」がある。
【原文】
改九子山為九華山聯句並序
李白等
青陽縣南有九子山、山高數千丈、上有九峰如蓮花。
按圖征名、無所依據、太史公南游略而不書。
事絕古老之口、復缺名賢之紀、
雖靈仙往復、而賦詠罕聞。
予乃削其舊號、加以九華之目。
時訪道江漢、憩於夏侯回之堂、
開簷岸幘、坐眺松雪、
因與二三子聯句、傳之將來。
妙有分二氣 靈山開九華。(李白)
層標遏遲日 半壁明朝霞。(高霽)
積雪曜陰壑 飛流賁陽崖。(韋權輿)
青瑩玉樹色 縹緲羽人家。(李白)
【書き下し文】
九子山を改め、九華山と為す聯句、並びに序
李白等
青陽縣の南に九子山有り、山は高く數千丈、上に蓮花の如き九峰有り。
圖に名を征さんと按ずるに、依據する所無く、太史公南游するも略して書せず。
事の古老の口に絕え、復た賢の紀に名を缺き、
靈仙の往復すると雖も、賦詠は聞くに罕なり。
予乃ち其の舊號を削り、以て九華の目を加ふ。
時に江漢を訪道し、夏侯回の堂に憩ひ、
簷を開き岸に幘し、坐して松雪を眺む、
因りて二三子と與に聯句し、之を將來に傳へん。
妙有りて、二氣を分かち、 靈山、九華を開く。(李白)
層標に、日は遏遲たり、 半壁に、朝霞の明く。(高霽)
積雪、曜陰に壑たり、 飛流、賁陽崖。(韋權輿)
青瑩、玉樹の色、 縹緲、羽人の家。(李白)
【我が儘勝手な私訳】
九子山を改めて、九華山と命名した際の聯句、並びに序
李白等
青陽縣の南に九子山と言う山が有る。
山は高くて數千丈もあり、山上は蓮華のように九峰の峰を形成している。
九子山を、諸書にその名の由来を求めるのだが、依據する書物は無いし、
太史公司馬遷が南游した際にも、略して「史記」に記していない。
九子山の伝承は古老の口承にも無く、復た諸書にもその名が無く、
九子山は靈仙の凄む霊地ではあるけれども、詩賦に詠まれることもほとんど無い。
そこで私は九子山の旧名を捨て、新しく九華の名に改めることとした。
丁度その頃、江漢の地を歴訪し、夏侯回の御堂に参拝し、
扉を開き岸に帽子を脱いで、座って松木の積もった雪を眺めながら、
そこで、高霽や韋權輿らと一緒に聯句し、その聯句を来るべき未来に伝えたい。
妙有分二氣 靈山開九華。
神妙が顕れ、陰陽の気が分かれ、結果出現したのが靈山、九華である。(李白)
層標遏遲日 半壁明朝霞。
重層する山峰に太陽が昇るのは遅いが、今日も中国に夜明けが訪れる。(高霽)
積雪曜陰壑 飛流賁陽崖。(韋權輿)
降り積もる雪が峰峰に照り輝き、賁陽崖から滝が流れ落ちるのを見る。(韋權輿)
青瑩玉樹色 縹緲羽人家。
全山、木々は青々と輝き、 神仙の住処は空虛渺茫としている。(李白)
○楹聯もしくは、対聯は、中国独特の文化である。本ブログでは、前に紹介済みなので、そちらを参照されたい。
・書庫「天台山国清寺」:ブログ『楹聯』
http://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/36536684.html
○九華山は、もともと、九子山と称したと言う。それを李白が九華山と命名した。その経緯を述べたものが上記の「改九子山為九華山聯句並序」である。九華山では重要な項目であるので、全部を勝手に訳してみた。
○楹聯・対聯は、なかなか意味深長なもので、そう簡単に訳せるものでもない。しかし、訳が無いと、何を意味するかが判らない。それで、一応、上記のように訳してある。本当は、楹聯・対聯と言うのは、もっと深奥なものであって、こんな簡単なものでは無い。
○中国では、オリジナルの楹聯・対聯が何処にでも存在する。それを目にすることがまた楽しい。なかなかその真意まで理解することは出来ないけれども。