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王陽明:化城寺六首

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○2013年6月14日、九華山の山上、化城寺へ参詣したのは、王陽明の「化城寺六首」を読み、九華山へ参拝することを思い立ったことに拠る。ある意味、王陽明が私の先達であった。

○これまで、李白「望九華贈青陽韋仲堪」詩、金喬覺「送童子下山」、劉禹錫「九華山歌」、梅堯臣「題滕學士九華山書堂」、杜牧「郡樓望九華」、王安石「宿化城寺閣」、李白等「改九子山為九華山聯句並序」と案内して来た。 九華山文学の最後は、やはり、 王陽明「化城寺六首」で締めたい。

○王陽明の「化城寺六首」は、以下の六首である。

    化城寺六首
  化城高住萬山深,樓閣憑空上界侵。
  天外清秋度明月,人間微雨結浮陰。
  缽龍降處雲生座,岩虎歸時風滿林。
  最愛山僧能好事,夜堂燈火伴孤吟。

  雲裡軒窗半上鉤,望中千裡見江流。
  高林日出三更曉,幽谷風多六月秋。
  仙骨自憐何日化,塵緣翻覺此生浮。
  夜深忽起蓬萊興,飛上青天十二樓。

  雲端鼓角落星斗,松頂袈裟散雨花。
  一百六峰開碧漢,八十四梯踏紫霞。
  山空仙骨葬金槨,春暖石芝抽玉芽。
  獨揮談塵拂煙霧,一笑天地真無涯。

  化城天上寺,石磴八星躔。
  雲外開丹井,峰頭耕石田。
  月明猿聽偈,風靜鶴參禪。
  今日揩雙眼,幽懷二十年。

  僧屋煙霏外,山深絕世嘩。
  茶分龍井水,飯帶石田砂。
  香細雲嵐雜,窗高峰影遮。
  林棲無一事,終日弄丹霞。

  突兀開穹閣,氤氳散曉鐘。
  飯遺黃稻粒,花發五釵松。
  金骨藏靈塔,神光照遠峰,
  微茫竟何是?老衲話遺蹤。

○このうち、冒頭詩は、本ブログでは、既に案内済みである。
  ・書庫「王陽明の故郷:余姚」:ブログ『王陽明:化城寺』
  http://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/37756322.html

○ここでは、王陽明「化城寺六首」の中で、私が最も気に入っている第四首を案内したい。

  【原文】
    化城寺六首:其四
         王陽明
    化城天上寺
    石磴八星躔
    雲外開丹井
    峰頭耕石田
    月明猿聽偈
    風靜鶴參禪
    今日揩雙眼
    幽懷二十年

  【書き下し文】
    化城寺六首:其四
         王陽明
    化城は、天上の寺なり、
    石磴は、八星まで躔る。
    雲外に、丹井を開き、
    峰頭に、石田を耕す。
    月明かりに、猿も偈を聴き、   
    風静かなれば、鶴の参禅す。
    今日、雙眼を揩つて、
    幽懷する、二十年。

  【我が儘勝手な私訳】
    九華山化城寺は、天上に存在する御寺である、
    九華山の石灯籠は、まるで北斗星まで続いているかのようだ。
    九華山では天空にまで、仙居丹井が開かれていて、
    九華山では山頂にまで、山田を耕している。
    九華山では月明かりに、猿も出て来て偈を聴くし、   
    九華山では風静かな中、鶴が参禅しているのを見る。
    今日、私は九華山化城寺にあって、流れ出る涙を拭いながら、
    これまでの私の心奥を、心静かに振り返ることだ。

○王陽明の詩を読むと判ることだが、彼は思想家と言うより、敬虔な仏教徒と呼ぶに相応しい。一般には、陽明学の始祖として崇められているけれども、儒家としての立場は、王陽明の、ほんの一面に過ぎない。それより遙かに彼の内面は奥深い。

○王陽明の故郷、余姚には、これまで3回訪れているけれども、まだ、王陽明のお墓には参詣していない。機会を見付けて一回は参拝しなくてはと思っている次第である。

○九華山化城寺を訪れてみると、九華山化城寺が、これほど、王陽明に感動を与えていることは諾なることと言うしかない。ただ、九華山化城寺が、王陽明当時の面影をすっかり喪失してしまっていることが何とも悲しい。それがまた、彼の唱えた革命思想の結果であると思えば、何とも皮肉な話と言うしかない。それは、王陽明が希求したものとは、まるでかけ離れている。

○王陽明にとって、仏教や道教の存在しない世界など、考えられないことであったに違いない。それは人間の本質に拘わることであって、儒家思想はその上に立って、初めて成立するものであった。そういう仏教や道教を否定する思想が存在すること自体、彼には想像だに出来なかっただろう。

○あらためて、王陽明「化城寺六首」を読むと、私には、王陽明が、『中国よ、お前は何処へ行く』と問い掛けているような気がしてならない。

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