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黄山文学

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○これまで、李白の黄山詩として、「山中問答」「贈黄山胡公求白鷴」「夜泊黄山聞殷十四呉吟」「送温處士歸黄山白鵝峰舊居」「宿鰕湖」と五作品を案内して来た。それほど李白は黄山に融け込んでいる。

○しかし、黄山が、特別、李白の占有地であるわけでもない。黄山には多くの風流文士が訪れ、多くの名詩名文を残している。一通り、そういうものに目を通した。

○その結果、黄山文学で、私には李白の精神を超える詩人を見付けることが出来なかった。それに上記した五作品を読んでいただくと判ることだが、李白の上記五作品には一貫した崇高な詩想が漂っているし、何よりその精神性の高さには、ただ脱帽するしかない。

○もっと言うと、上記の李白五作品からは、ある種の物語を造作することも可能なくらい、寓意に富んでいるし、黄山と人物とが見事に表現されている。漢文学が専門で無い素人の私でさえ、そう感じる。専門家ならもっと深い世界が覗けるのではないか。

○李白の黄山文学の根底には、もちろん、道家思想が存在する。そういう道家思想が黄山と言う故地を得て、始めて李白の黄山文学は成立しているのであろう。

○意外に、李白の時代が道家思想の全盛期だったわけでもない。中国で道家思想の全盛期は玄言詩の時代にあって、李白の時代ではない。李白はそういう過去の時代の思想を受け継ぎ、それをうまく表現している。李白の黄山文学では、李白と言う詩人がどういう詩人であったかを垣間見ることが出来る。

○もちろん、李白の時代には、無数の黄山文学が存在したに違いない。それらの多くが淘汰されて、詩仙李白の詩が残ったに過ぎないのかも知れない。ただ、私達は、その残されたもので、当時を窺うしかないわけである。

○2013年6月15日に、黄山を訪れ、世界遺産にも登録された黄山の自然を存分に味わうことが出来た。折角、黄山を訪れたのだから、黄山文学についても、少しは知りたいと思って諸本を調べた。李白の五作品が黄山文学全てでは無いと判っているけれども、時間的関係から、李白の五作品で黄山文学を代表させるしかない。

○最後に、気になった李白以外の黄山詩をいくつか並べて、黄山文学を終了したい。スペースが無いので、原詩のみを掲載する。尚、詩は古い時代のものに限定してある。

      宮中樂五首(其の五)
           張仲素
    奇樹留寒翠
    神池結夕波
    黄山一夜雪
    渭水瀉聲多

      奉送五叔入京兼寄綦毋三
           李頎
    雲陰帶殘日
    悵別此何時
    欲望黄山道
    無由見所思

      侍宴安樂公主新宅應制
           武平一
    紫漢秦樓敞
    黄山魯館開
    簪裾分上席
    歌舞列平台
    馬既如龍至
    人疑學鳳來
    幸茲聯棣萼
    何以接鄒枚

      判道士黄山隱
           皇甫大夫
    道士黄山隱
    輕人復重財
    太山將比甑
    東海只容杯
    綬藏雲帔
    烏巾換鹿胎
    黄泉六個鬼
    今夜待君來

      送李億東歸
           温庭筠
    黄山遠隔秦樹
    紫禁斜通渭城
    別路青青柳發
    前溪漠漠花生
    和風澹盪歸客
    落日殷勤早鶯
    灞上金樽未飲
    宴歌已有餘聲

      奉和幽山雨後應令
           虞世南
    肅城鄰上苑
    黄山邇桂宮
    雨歇連峰翠
    煙開竟野通
    排虚翔戲鳥
    跨水落長虹
    日下林全暗
    雲收嶺半空
    山泉鳴石澗
    地籟響岩風

      寄劉校書
           郭震
    俗吏三年何足論
    毎將榮辱在朝昏
    才微易向風塵老
    身賤難酬知己恩
    御苑殘鶯啼落日
    黄山細雨濕歸軒
    回首漢家丞相府
    昨來誰得掃重門

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