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徐凝:憶揚州

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○揚州大明寺の売店で買って来た「揚州詩咏」(李保華著)を読んでいる。目次は、時代別に、
  £何検隋代
  唐代
  A彗
  じ蟻
  ヌ逝
  清代
  民国
となっている。その「£何検隋代」の扉ページには、楊広の「江都宮楽歌」詩の、
  揚州旧処可淹留
  台榭高明復好遊
句を載せ、「唐代」には、徐凝の「憶揚州」詩の、
  天下三分明月夜
  二分無頼是揚州
句を載せている。

○楊広は、もちろん、隋の煬帝のことである。本ブログでは、すでに、隋煬帝「春江花月夜」詩を案内済みであるから、ここでは、略す。
  ・書庫「鑑真和上の揚州」:ブログ『隋煬帝:春江花月夜』
  http://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/38810576.html

○ここでは、徐凝の「憶揚州」詩を案内したい。

  【原文】
      憶揚州
       徐凝
    蕭嬢臉薄難勝涙
    桃葉眉長易覚愁
    天下三分明月夜
    二分無頼是揚州

  【書き下し文】
      憶揚州
       徐凝
    蕭嬢の臉は薄く、涙に勝へ難く、
    桃葉の眉は長く、愁ひを覚え易し。
    天下三分、明月の夜、
    二分無頼、是れ揚州。

  【我が儘勝手な私訳】
    恋する乙女の瞼は薄く、涙に暮れることは出来ないし、
    恋する乙女の眉は長く、恋に悩まされ続けるしかない。
    明月の夜、世界中に降り注ぐ月光を三等分したら、
    その二つまでの月光を占有する、それが貴女の居る揚州なのだ。

○徐凝は、日本ではあまり馴染みの無い詩人である。中国の検索エンジン百度の百度百科が載せる徐凝は、次の通り。

      徐凝(唐代诗人)
   徐凝,唐代诗人,浙江睦州人,代表作《奉酬元相公上元》。
  【简介】
   约公元八一三年、唐宪宗元和中前后前后在世。字不详,睦州人。唐分水柏山(今桐庐县分水镇柏山
  村)人。与施肩吾同里,日共吟咏。初游长安,因不愿耀才华,没有拜谒诸显贵,竟不成名。南归前
  作诗辞别侍郎韩愈:“一生所遇惟元白,天下无人重布衣。欲别朱门泪先尽,白头游子白身归。”抨击
  了当时只重名望,不重真才实学的社会现象。白居易任杭州刺史,尝于杭州开元寺观牡丹,见徐凝题牡
  丹诗一首,大为赞赏,邀与同饮,尽醉而归。后与颇负诗名的张祜较量诗艺,祜自愧勿如,白居易判凝
  优胜题牡丹诗,为白居易所赏,元稹亦为奖掖,诗名遂振于元和间。至长安,不善干谒,仅游韩愈之门,
  竟不成名。将归,以诗辞韩愈,有“欲别朱门泪先尽,白头游子白身归”之句。唐元和中,举进士,官
  至金部侍郎。
  http://baike.baidu.com/subview/227626/7403087.htm#viewPageContent

○『百度百科』には、徐凝の「憶揚州」詩の項目も存在する。それ程、中国では知られた詩なのであろう。

      忆扬州
   《忆扬州》是唐代诗人徐凝创作的七言绝句。本为一首怀人诗,但标题却不明题怀人,而偏说怀地,
  以离恨千端的绵绵情怀,追忆当日的别情。
  http://baike.baidu.com/view/999040.htm

○「揚州詩咏」(李保華著)が扉ページに使うくらいであるから、徐凝の「憶揚州」詩が名詩であることは間違いない。それでも、起句、
  蕭嬢臉薄難勝涙    蕭嬢の臉は薄く、涙に勝へ難く、
から、承句、
  桃葉眉長易覚愁    桃葉の眉は長く、愁ひを覚え易し。
へと受け、転句、
  天下三分明月夜    天下三分、明月の夜、
へと転回し、結句、
  二分無頼是揚州    二分無頼、是れ揚州。
と結ぶ構成力には、ただ驚くしかない。

○特に、
  天下三分明月夜    天下三分、明月の夜、
  二分無頼是揚州    二分無頼、是れ揚州。
は、何のことが、理解に苦しむ。

○「論語」泰伯篇に、
  三分天下有其二、以服事殷。    天下を三分して其の二を有ち、以て殷に服事す。
  周之徳、其可謂至徳也已矣。    周の徳は、其れ至徳と謂うべきのみ。
とある。これが典拠らしい。

○「無頼」とは、本来、無法者を意味する。しかし、ここでは愛すべき者の謂いである。そういうことは、『百度百科』の「憶揚州」詩項目を参照して理解した。
  蕭嬢臉薄難勝涙    蕭嬢の臉は薄く、涙に勝へ難く、
  桃葉眉長易覚愁    桃葉の眉は長く、愁ひを覚え易し。
から、
  天下三分明月夜    天下三分、明月の夜、
と転回することなど、誰が思い付くだろうか。まして、それを、
  二分無頼是揚州    二分無頼、是れ揚州。
で、結ぶことなど、不可能に近い。

○まさに、徐凝の「憶揚州」詩は、魂魄を驚かす詩と言うしかない。

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