○中国の検索エンジン百度の百度百科が案内する北固山項目に、『诗韵北固』の項目があって、3首が掲載されているのが気になった。今回案内するのは、その第一首、王湾の「次北固山下」詩である。
【原文】
次北固山下
王湾
客路青山外
行舟緑水前
潮平両岸闊
風正一帆懸
海日生残夜
江春入旧年
郷書何処達
帰雁洛陽辺
【書き下し文】
北固山の下に次す
王湾
客の路は、青山の外、
行く舟は、緑水の前。
潮は平かに、両岸に闊け、
風は正しく、一帆に懸かかる。
海日は、残夜を生じ、
江春は、旧年より入る。
郷書は、何れの処へと達し、
帰雁は、洛陽の辺りか。
【我が儘勝手な私訳】
旅人の行く道は、北固山甘露寺から続いているし、
長江を行く舟は、北固山甘露寺の北に眺められる。
東海の潮は滔々と押し寄せ、長江の両岸を充たし、
東風が吹いて、長江を遡る帆船にはちょうど良い。
海から昇る朝日は、夜の終わりを告げ、
江南の春は、旧年の秋冬の続きである。
故郷の家からの便りは、何処へと行くのか、全く届かない、
今春、北固山を旅発った雁群は、今頃、私の故郷、洛陽辺りを飛んでいるに違いない。
○偶々、出遭った詩であるが、王湾の「次北固山下」詩が、何とも佳詩であることに感心する。実に良く出来ている。当時、北固山甘露寺は、長江の河口に位置していた。ここには、北固山甘露寺に訪れた朝を、
海日生残夜 海日は、残夜を生じ、
と、表現し、北固山甘露寺に訪れた春を
江春入旧年 江春は、旧年より入る。
と、見事に表現している。
○北固山甘露寺からの眺望の素晴らしさも申し分無い。
客路青山外 客の路は、青山の外、
が、北固山甘露寺南側の眺望であり、
行舟緑水前 行く舟は、緑水の前。
が、北固山甘露寺北側の眺望となっている。
○王湾の「次北固山下」詩が案内するのは、南北の眺望だけではない。
潮平両岸闊 潮は平かに、両岸に闊け、
は、東側の眺望であり、
風正一帆懸 風は正しく、一帆に懸かかる。
は、西側の眺望であることが判る。
○結狗の、
郷書何処達 郷書は、何れの処へと達し、
帰雁洛陽辺 帰雁は、洛陽の辺りか。
が、また圧巻である。それは李白の「静夜思」、
擧頭望山月 頭を挙げて、山月を望み、
低頭思故郷 頭を低れて、故郷を思ふ。
を想起させるし、杜甫の「春望」、
烽火連三月 烽火三月に連なり、
家書抵万金 家書万金に抵る。
を、思い起こす。また、王勃の「九日懷封元寂」詩、
今日龍山外 今日、龍山の外、
當憶雁書歸 當に雁書の歸るを憶ふべし。
を、思い出さずにはいない。当然、「漢書」にある、蘇武の故事、
言天子射上林中、得雁。
足有系帛書。言武等在荒澤中。
があることは、言うまでも無い。
○王湾の「次北固山下」詩は、中国では有名らしく、『百度百科』にも、その項目がある。
次北固山下
《次北固山下》是唐代诗人王湾的作品。此诗以准确精练的语言描写了冬末春初时作者在北固山下停
泊时所见到青山绿水、潮平岸阔等壮丽之景,抒发了作者深深的思乡之情。全诗用笔自然,写景鲜明,
情感真切,情景交融,风格壮美,极富韵致,历来广为传诵。
这首写冬末春初,旅行江中,即景生情,而起乡愁。开头以对偶句发端,写神驰故里的飘泊羁旅之情
怀。次联写“潮平”、“风正”的江上行船,情景恢弘阔大。三联写拂晓行船的情景,对仗隐含哲理,
“形容景物,妙绝千古”,给人积极向上的艺术魅力。尾联见雁思亲,与首联呼应。全诗笼罩着一层淡
淡的乡思愁绪。“海日生残夜,江春入旧年”,不失诗苑奇葩,艳丽千秋。
http://baike.baidu.com/view/287037.htm?fr=aladdin
○また、『百度百科』が案内する王湾は、次の通り。
王湾
王湾(693年-751年),号为,唐代诗人,洛阳(今河南洛阳)人。他的诗现存10首。作为开元初
年的北方诗人,往来于吴楚间,为江南清丽山水所倾倒,并受到当时吴中诗人清秀诗风的影响,写下了
一些歌咏江南山水的作品,《次北固山下》就是其中最为著名的一篇。尤其其中“海日生残夜,江春入
旧年”两句,得到当时的宰相张说的极度赞赏,并亲自书写悬挂于宰相政事堂上,让文人学士作为学习
的典范。由此,这两句诗中表现的那种壮阔高朗的境象便对盛唐诗坛产生了重要的影响。直到唐末诗人
郑谷还说“何如海日生残夜,江春入旧年。”
http://baike.baidu.com/view/62436.htm?fr=aladdin