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崔致遠:蜀葵花

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○揚州文学を扱っているうちに、崔致遠の詩に辿り着き、『酬楊贍秀才送別』詩、『秋夜雨中』詩、『江南女』詩、『寓興』詩、『古意』詩と続けて来た。引き続き今回案内するのは、崔致遠の『蜀葵花』詩である。

  【原文】
      蜀葵花
        崔致遠
    寂寞荒田側
    繁花圧柔枝
    香軽梅雨歇
    影帯麦風欹
    車馬誰見賞
    蜂蝶徒相窺
    自慙生地賎
    堪恨人棄遺

  【書き下し文】
      蜀葵花
        崔致遠
    寂寞とした荒田の側らに、
    花の繁りて、柔枝を圧す。
    香りは軽く、梅雨の歇、
    影を帯びて、麦風の欹。
    車馬の、誰か見賞せん、
    蜂蝶の、徒だ相窺ふのみ。
    自ら慙づ、生地の賎しきを、
    堪だ恨む、人の棄遺せしを。

  【我が儘勝手な私訳】
      タチアオイの花
    殺伐とした荒れた農地の畦に、
    美しいタチアオイの花が沢山咲き誇り、柔らかい枝は押し潰されるかのようである。
    タチアオイの花の香りは軽やかに、梅雨の季節に香り、
    タチアオイの花は陽光を浴びて、実った麦の上を吹き渡って来る風に揺れている。
    人がわざわざ馬や車に乗って、タチアオイの花を見に来ることはないし、
    ハチやチョウだって、タチアオイの花に留まろうかどうか、躊躇している。
    タチアオイの花は自分の咲いている場所があまりに酷いのを嘆き、
    ここにタチアオイの花を遺棄した村人を、ただ恨めしく思うしかないのだ。

○崔致遠の『蜀葵花』詩は、諷喩詩であり、寓意詩である。人は本人の意志に関係なく唐突に誕生し、存在する。生まれる時代も場所も選択の余地など無い。ジャン=ポール・サルトルが此の詩を目にしたら、実存主義を詠っていると絶賛するに違いない。しかし、それくらいの哲学なら、中国では既に紀元前に存在すると平然と道士が教えてくれるだろう。

○中国の検索エンジン百度の「百度百科」には、蜀葵花について、次のように載せる。

       蜀葵(锦葵科蜀葵属二年生草本)
   蜀葵(学名:Althaea rosea (Linn.) Cavan.),别称一丈红、大蜀季、戎葵。二年生直立草本,高
  达2米,茎枝密被刺毛。[1] 花呈总状花序顶生单瓣或重瓣,有紫、粉、红、白等色;花期6月至8月,
  果,种子扁圆,肾脏形。喜阳光充足,耐半阴,但忌涝。
   原产中国四川,现在中国分布很广,华东、华中、华北均有。由于它原产于中国四川,故名曰“蜀
  葵”。又因其可达丈许,花多为红色,故名“一丈红”。于6月间麦子成熟时开花,而得名“大麦熟”。
   嫩叶及花可食,皮为优质纤维,全株入药,有清热解毒、镇咳利尿之功效。根可作润滑药,用于粘膜
  炎症,起保护、缓和刺激的作用。从花中提取的花青素,可为食品的着色剂。全草入药,有清热止血、
  消肿解毒之功,治吐血、血崩等症。茎皮含纤维可代麻用。
   世界各国均有栽培供观赏用途。
  http://baike.baidu.com/subview/65835/5135148.htm?fromtitle=%E8%9C%80%E8%91%B5%E8%8A%B1&fromid=2599544&type=syn

○蜀葵花は、多分、日本のタチアオイだろうと思って訳している。正確かどうかは判らないけれども。

○先行する作品に、岑参の『蜀葵花歌』がある。これがまたほのぼのとした佳詩である。折角であるから、次回、案内したい。

    蜀葵花歌
      岑参
  昨日一花開,今日一花開。
  今日花正好,昨日花已老。
  始知人老不如花,可惜落花君莫掃。
  人生不得長少年,莫惜床頭沽酒銭。
  請君有銭向酒家,君不見,蜀葵花。

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