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邪馬台国と投馬国

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○『日向国の邪馬台国』と題して、ここまで39個のブログを書いてきた。その中で、邪馬台国や狗奴国については何度も書いているが、南九州三国の一つである投馬国については、何も書いていない。ある意味、投馬国は未開の後進国だと言うしかない。

○それは日本国の創始にも関係することであって、日本国は西から開け、次第に東へ東へと進んで行っている。『あづまのくに』と言えば、逢坂の関以東を指す言葉であった時代もあるくらいである。

●『投馬国』の名が何を意味するかは、極めて大きな問題と言わねばならない。「三国志(魏志倭人伝)」で、編者陳寿は、
  ・(不彌國)南至投馬國、水行二十日。官曰彌彌、副曰彌彌那利、可五萬餘戸。
  ・(投馬國)南至邪馬壹國。女王之所都、水行十日、陸行一月。
   官有伊支馬、次曰彌馬升、次曰彌馬獲支、次曰奴佳鞮。可七萬餘戸。
と言う、極めて乱暴な記述の仕方をしている。不彌國から投馬國へ至るには、水行すること二十日間、何の目印もないし、投馬國から邪馬壹國へ至るにしても、水行十日と陸行一月の間、何一つ案内標識が無いと言うのは、極めて非常識な表現だと言うしかない。

●しかし、これが島を沿岸沿いに巡回する航路であれば、常識的な表現だと言えよう。何故なら、絶対に道に迷う心配が無いわけであるから。それこそ、岸伝いに行き、二十回寝たら、必ず投馬國に到着すると言うのだから。

●『水行十日』も、おそらく、そういう意味であろう。問題は『陸行一月』である。この表現をまともに考える学者先生もいらっしゃるけれども、日本で、そういうことは無理な話である。かりに、一日10劼靴歩かなかったと考えても、一月では300劼任△襦F椶任蓮何処であっても、300劼睚發韻亞い暴个襦E海路があれば、わざわざ陸行するはずがない。『陸行一月』は、日本ではどう考えても『陸行一日』の誤写誤記だとするしかない。

●それに、「三国志(魏志倭人伝)」の編者、陳寿は極めて用意周到、石橋を叩いても渡らない史家である。「三国志(魏志倭人伝)」に拠れば、
  ・自(帯方)郡至女王國萬二千餘里。
だと言う。それなら、帯方郡から末盧國までがちょうど『萬餘里』だから、末盧國から邪馬壹國までは『二千餘里』しかないことになる。

●もう一つ、「三国志(魏志倭人伝)」には、次の記録も存在する。
  ・參問倭地、絶在海中洲島之上、或絶或連、周旋可五千餘里。

●つまり、魏国が認識する倭国の大きさは『周旋可五千餘里』だと言う。『周旋』と言うのは、何度でも同じところを周回することを意味するから、倭国であれば、それは島の意味だろう。すなわち、魏国が認識する倭国は、『一周五千餘里』の島だと言うのである。

●これも起点が問題となる。「三国志(魏志倭人伝)」では、海を渡る際には、必ず『渡海』の文言がある。だから、『渡海』の文言が無くなったところからが陸続きなのである。そう考えると、末盧國から先が陸続きであることが判る。

◎判るように、「三国志(魏志倭人伝)」が案内する『魏国が認識する倭国』は、どう考えても九州島だとするしかない。その九州島は、右回りと左回りがある。全周が『五千餘里』だと言うのだから、短い方が『二千餘里』で、長い方が『三千餘里』と言うことだ。

◎諸条件を勘案すれば、右回りが『三千餘里』で、左回りが『二千餘里』だと言うことになる。帯方郡から邪馬台国までの道程を整理すると、次のようになる。
  ∥喨刈狗邪韓國=七千餘里
  狗邪韓國→對馬國=千餘里
  U馬國→一大國=千餘里
  ぐ貘舖□末盧國=千餘里
  ニ犀□伊都國=五百里
  Π謀墺□奴國=百里
  奴國→不彌國=百里
  不彌國→投馬國=千五百余里
  投馬國→邪馬壹國=八百余里

◎つまり、『水行二十日』は「千五百余里」に変換できるし、『水行十日、陸行一月』も「八百余里」となって、極めて妥当な数字となることが判る。これが本当の「三国志(魏志倭人伝)」の読み方なのである。

◎「三国志(魏志倭人伝)」の編者、陳寿が如何に親切な男であるかが判ると言うものである。こんな丁寧な道程案内は無い。ただ、それをそのまま表現しないのが中国の史書の作法なのである。これを『春秋の筆法』と言う。だから、中国の史書は読み取るのが至難の業なのである。

◎「三国志(魏志倭人伝)」が投馬國をこのように表現しているのにも、十分理由がある。投馬國は九州島右回りのシンボルマークとなっている国である。そして、南九州三国の一つで、倭国を表現するには欠かせない大国であった。

◎記紀を読むと、もっと面白い。投馬國が開発されたのは、日本武尊の時代であることが判る。次回はそういう話をしたい。

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