○前回、宋之問の「途中寒食題黄梅臨江驛寄崔融」詩を案内した。「途中寒食題黄梅臨江驛寄崔融」詩が創られたのは、湖北省黄冈市黄梅县だと言う。その黄梅县から長江を渡ると、現在の九江市である。そこが江州で、そこで詠われた詩が、今回案内する宋之問の「寒食江州滿塘驛」詩である。
【原文】
寒食江州滿塘驛
宋之問
去年上巳洛橋邊
今年寒食廬山曲
遙憐鞏樹花應滿
復見吳洲草新
吳洲春草蘭杜芳
感物思歸懷故鄉
驛騎明朝發何處
猿聲今夜斷君腸
【【書き下し文】
江州満塘駅にて寒食
宋之問
去年の上巳は、洛橋の辺りに、
今年の寒食は、廬山の曲なり。
遥か怜れむ、鞏樹の花は応に満つるべく、
復た見る、呉洲の草は新緑たり。
呉洲の春草、蘭杜の芳しく、
物に感じて帰るを思ひ、故郷を懐かしむ。
駅騎にて明朝、何れの処にか発たん、
猿声は今夜、君の腸を断たん。
【我が儘勝手な私訳】
昨年の3月3日、上巳節には洛陽に居たのに、
今年の寒食節には、廬山の麓、江州満塘駅に居ることだ。
遙か洛陽の都では、まさに鞏樹の花が満開の季節であろうに、
現在眼にする、呉国の河州には、一面新緑が美しい。
また、呉国の河州には、蘭花や杜若花の香りが漂い、
季節の移り変わりを感じては、故郷に帰る日のことを思わずには居られない。
駅舎の馬に乗って、明日の朝は、何処へ旅立つのだろうか、
夜に聞こえて来る猿の声は、私をひどく悲しませるに違いない。
○宋之問の「途中寒食題黄梅臨江驛寄崔融」詩に引き続き、「寒食江州滿塘驛」詩を読むと、当時の作者の心情の変化が窺えて興味深いものがある。宋之問が流されたのは、瀧州(現在の広東省羅定市)だと言うから、まだまだ遠い。
○この九江市や武漢、岳陽あたりは、ちょうど、中国交通の要所であって、南北と東西とが交差するところとなっている。江南三楼が存在するのも、この辺りである。何故、あれほど、江南三楼が有名であるのか。それは、こういう行き別れの場所が江南三楼の地であることとも関係しているのではないか。
○本ブログでは、その江南三楼をすでに踏破している。
・書庫「岳陽・武昌」:70個のブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/folder/1234220.html?m=l&p=5
・書庫「岳陽楼」:8個のブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/folder/1255206.html?m=l
・書庫「黄鶴楼」:13個のブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/folder/1255207.html?m=l
・書庫「滕王閣」:17個のブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/folder/1255208.html?m=l&p=1
○廬山や九江にもすでに訪れている。
・書庫「廬山・九江」:42個のブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/folder/1234221.html?m=l&p=1