○立春に寄せて。羅隠の『京中正月七日立春』詩、張九齡の『立春日晨起對積雪』、韓愈の『春雪』詩と続けているが、今回は韋莊の『立春』詩である。
【原文】
立春
韋莊
青帝東來日馭遲
暖煙輕逐曉風吹
罽袍公子樽前覺
錦帳佳人夢裡知
雪圃乍開紅菜甲
彩幡新翦楊絲
殷勤為作宜春曲
題向花箋帖繡楣
【書き下し文】
立春
韋莊
青帝の東來して、日の馭るの遲く、
暖煙の輕逐して、曉の風の吹く。
罽袍の公子は、樽前を覺え、
錦帳の佳人は、夢裡を知る。
雪圃は乍ち開く、紅菜の甲、
彩幡は新たな翦、楊の絲。
殷勤に宜春の曲を作り為し、
題して花箋、帖繡、楣に向かふ。
【我が儘勝手な私訳】
春の神、青帝が東からやって来て、しだいに日が長くなって、
暖炉の煙も軽やかに高く昇って、夜明けの風がそれを吹き流して行く。
立派な外套を羽織った若者は、春の宴会の味を覚えるし、
御殿の奥深く暮らす美人は、春に自分が別世界に生きていることを知る。
真っ白な雪の畠を掘ると、紅菜頭が忽ち出て来るし、
立春を飾る彩勝を緑の柳の糸のように細く、新しく切る。
心を込めて迎春の詩文を作り為して、
書こうと思って美紙や立派な布や柱に向かうことである。