○立春の詩を案内し続けているが、今回案内するのは、韓元吉の『立春感懷』詩である。
【原文】
立春感懷
韓元吉
南北驅馳老病身
不堪節物更催人
梅梢白白猶藏臘
蔬甲青青便作春
鐵馬漸欣邊塞靜
土牛還祝歳時新
聖朝文物從茲始
元日郊丘得上辛
【書き下し文】
立春感懷
韓元吉
南北に驅馳す、老病の身、
節物に堪えずして、更に人を催す。
梅の梢は白白として、猶ほ臘を藏するがごとく、
蔬甲は青青として、便ち春を作す。
鐵馬は漸欣し、邊塞は靜かにして、
土牛は還祝して、歳時は新たなり。
聖朝の文物は、茲從り始まる、
元日に郊丘、上辛を得。
【我が儘勝手な私訳】
すでに老病の身だと言うのに、まだ北へ南へと移動を強いられている、
今日、立春を迎えると言うのに、何も準備できす、更に人に急かしている。
梅木には白い花が咲き乱れ、まだ十二月の風情を醸し出しているのに対し、
蔬菜は青々と萌芽して、すでに春が訪れていることを知らせている。
鉄甲の戦馬は、辺境の城塞が静かなのを、一時の喜びとし、
十二月に粘土で作った牛は、立春に再び登場して、新年を祝う縁となる。
中国古代の文化は、この立春の行事から始まる、
元日には、郊外の丘に登り、上辛の行事を行う。
○韓元吉も、日本では、ほとんど、馴染みの無い詩人である。中国の検索エンジン百度の百度百科が案内する韓元吉は、次の通り。
韩元吉
韩元吉(1118~1187),南宋词人,字无咎,号南涧,汉族,开封雍邱(今河南开封市)人,一作许昌
(今属河南)人。韩元吉词多抒发山林情趣,如《柳梢青》"云淡秋云"、《贺新郎》"病起情怀恶"等。
著有《南涧甲乙稿》、《南涧诗余》等,存词80余首。
https://baike.baidu.com/item/韩元吉/1244911?fr=aladdin
○韓元吉の『立春感懷』詩を読むと、韓元吉が、何とも花のある詩人であることが判る。このように、立春詩を読み続けていると、中国の人にとって、立春がどのようなものであるかを、理解することが出来る。甚だ面倒な作業ではあるけれども、こういう作業を行わない限り、立春がどのようなものであるかを理解することは難しい。そう考えて、こういう作業を繰り返している。
○意外に、現代の中国人にも、そういう文化が正確には伝承されていないのではないか。立春詩を読み続けていると、そういう気がしてならない。文化を享受、継承するには、「耕す」しかないのである。