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枕詞「天降付く」が教えること:其十一

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○邪馬台国三山の聳えるところが邪馬台国であることは言うまでも無い。「三国志」には、そういうことは皆目記録されていない。わすかにそれを暗示しているのが『卑弥呼の鬼道』ではないか。「三国志」に拠れば、卑弥呼は鬼道を事とし、能く衆を惑わしたとある。原文が気になる方もいらっしゃかと思うので、案内しておく。
  其国本亦以男子為王住七八十年、倭国乱相攻伐歴年乃共立一女子為王。
  名曰卑弥呼。事鬼道能惑衆。年已長大無夫婿有男弟佐治国。自為王以来少有見者。
  以婢千人自侍。唯有男子一人給飲食伝辞出入居処。宮室楼観城柵厳設常有人持兵守衛。

○「三国志」倭人条は、わずか1984字に過ぎない。しかし、「三国志」巻第30、『烏丸鮮卑東夷傳』全文9426字の中で、九国が案内されているが、その中で、もっとも字数の多いのが倭人条の1984字なのである。次は韓傳の1521字、その次が高句麗傳の1351字となっている。

○判るように、「三国志」の『烏丸鮮卑東夷傳』で、もっとも注視されているのが倭国であることを理解している人は少ない。「三国志」倭人条は、そういうふうに読むものなのである。「三国志」の編者、陳壽が『烏丸鮮卑東夷傳』をどういう目論見で書いたか。結構大事な要件である。

○私たちは、それを『烏丸鮮卑東夷傳』を読むことで理解する。卑弥呼や邪馬台国を知ろうとするならば、そういう作業を丁寧に行うことが必要なのである。『烏丸鮮卑東夷傳』すら、満足に読まないで、卑弥呼や邪馬台国を語ったところで、それは何にもならない。

○第一、「三国志」倭人条の主題すら、明確にしないで、「三国志」倭人条を読んだとは言えない。「三国志の倭人条の主題が何であるか。そういうことを書いた書物は、ほとんど無い。

○「三国志」倭人条の主題は、誰が何と言おうと、倭国三十国の案内にある。そういうことを書いた書物も皆無である。その倭国三十国は、次のように案内される。
  【渡海三国】
    ・狗邪韓国・対馬国・壱岐国
  【北九州四国】
    ・末廬国・伊都国・奴国・不弥国
  【中九州二十国】
    ・斯馬国・巳百支国・伊邪国・都支国・邇奴国・好古都国・不呼国
    ・姐奴国・対蘇国・蘇奴国・呼邑国・華奴蘇奴国・鬼国・為吾国・
    ・鬼奴国・邪馬国・躬臣国・巴利国・支惟国・烏奴国・(奴国)
  【南九州三国】
    ・投馬国・邪馬台国・狗奴国

○これを紹介したのも、当古代文化研究所の研究成果の一つである。「三国志」の編者、陳壽の興味関心が何処にあるか。それを理解することは大事な要件である。それには、陳壽がどんな男であったかを学ぶしかない。

○陳壽は四川省南充市の出身である。陳壽の著作を読むことと同時に、彼の出身地を理解すれば、彼の人となりの幾らかは知ることができるのではないか。そう思って、当古代文化研究所では、四川省南充市を訪問し、陳壽を顕彰した南充西山萬卷楼を訪れている。
  ・書庫「陳寿の故郷・南充」:28個のブログ
  https://blogs.yahoo.co.jp/sigureteikamoyama/folder/1272564.html?m=l&p=1

○その陳壽が『烏丸鮮卑東夷傳』で、倭人をどのように評価しているか。なかなか、そういう話を聞かない。当古代文化研究所では、次のように案内している。

○『烏丸鮮卑東夷傳』には、烏丸鮮卑東夷傳序文(440字)のほかに、東夷傳序文(330字)が存在する。その東夷傳序文で、陳壽は倭人及び倭国を次のように評価している。
  雖夷狄之邦、而俎豆之象存。(夷狄の邦と雖も、而も俎豆の象存す。)
  中國失禮、求之四夷、猶信。(中國禮を失し、之を四夷に求む、猶ほ信なり。)
  【我が儘勝手な私訳】
  倭国は野蛮人の国ではあるが、それなのに、しっかり禮法文化が存在する。
  それは現在の中国が見失った禮法文化で、それが倭国には存在する。信じられないが本当である。

○お判りだろうか。「三国志」は、このように読むべき書物なのである。そういうことも知らないで、「三国志」を読んだところで、仕方の無い話である。それ程、「三国志」を読むことは難しい。

○邪馬台国がどんなに文化国家であり、卑弥呼がどんなに文化人であったか。そういうことを陳壽は「三国志」で、ちゃんと伝えている。それなのに、日本人は、千七百年も経つと言うのに、いまだに、満足に「三国志」がきちんと読めない。何とも貧しい国民であることか。

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