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枕詞「天降付く」が教えること:其十七

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○前回の最後に、こういうふうに書いた。
   ・日向国は広い。その日向国の中心が何処であるかを規定することは、日向神話を考える上で避け
  て通れない問題である。しかし、誰もそういうことを問題としない。はっきり言えることは、宗教
  上、日向国の中心が鹿児島県鹿児島郡三島村硫黄島であることは、間違いない。
   ・また、そこは『八雲立つ出雲』でもある。次回は、その話をしたい。

○枕詞「天降付く」が香具山に掛かる枕詞であるように、枕詞「八雲立つ」は出雲に掛かる枕詞である。須佐之男命が出雲国須賀で宮を造営なさった時に歌った歌で、「古事記」には、日本最初の和歌として知られる次の和歌がある。
  八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を

○同様の和歌を「日本書紀」にも載せている。そういう意味で、敷島の道の始めとされる和歌である。何しろ、作者が天照大御神の弟、須佐之男命と言うのだから、何とも古い話である。その冒頭を飾るのが枕詞「八雲立つ」となっている。

○或る意味、枕詞「八雲立つ」は、それ程、由緒正しい言葉だとも言える。和歌の起源とされる和歌の冒頭を飾るくらいの言葉なのだから。その割には、枕詞「八雲立つ」は、大事にされていない気がしてならない。と言うか、真面目に枕詞「八雲立つ」を研究した人は居ないのではないか。

○ちなみに、岩波古語辞典には、次のように載せる。
      八雲立つ
   〔枕詞〕いよいよさかんに雲が立ち出る意から地名「出雲(いづも)」にかかる。

○岩波日本古典文学大系本「古代歌謡集」の『古事記歌謡』の頭注には、次のように載せる。
      八雲立つ
   盛んな雲が立つ意で、「出雲」の枕詞。イヅモの地名を「出づる雲」の意に解して、同義のほめ詞
  を冠したもの。

○同じ、『古事記歌謡』の補注には、次のように説明する。
      八雲立つ
   前文によれば雲が立ち登ったから「八雲立つ」と歌ったということになるが、出雲風土記には八束
  水臣津野の命が「八雲立つ」と詔り給うたから、そういうのだと説明している。古事記の前文も、出
  雲風土記も「八雲立つ出雲」という地名の地源を、後から説明したものであることがわかる。

○あわせて、出雲八重垣についても、見ておくと、『古事記歌謡』の頭注には、次のように載せる。
      出雲八重垣
   「出雲」の地名は奈良県磯城郡初瀬町にもあるが、ここは出雲の国であろう。「八重垣」は家の周
  囲に、幾重にも作り廻らした垣。但し、ここはほめ詞。

○『古事記歌謡』の補注に、八重垣項目がある。
      八重垣
   これは本来幾重にも結い廻らした垣のことであるが、「八重」は美称としても用いられる。践祚大
  嘗祭式に、悠紀院と主基院との中垣の南端に「八重垣」と称する柴垣があって、鉾を押すことになっ
  ているが、これは美称で幾重にも廻らすのではない。ここもほめ詞の八重垣と思われる。

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