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王維:方尊師帰南岳

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○李白「李白江夏送林公上人游衡岳序」、杜甫「望岳・第三首」詩と続けたから、今回は、王維の「方尊師帰南岳」詩を紹介したい。それほど、南岳衡山は、多くの詩人に詠まれている。

  【原文】
      方尊師帰南岳
          王維
    山圧天中半天上
    洞穿江底出江南
    瀑布松杉常帯雨
    夕陽蒼翠忽成嵐

  【書き下し文】
      方尊師の南岳に帰る
          王維
    山は天中を圧し、半ば天上に、
    洞は江底を穿ち、江南に出づ。
    瀑布と松杉、常に雨を帯び、
    夕陽は蒼翠、忽ち嵐を成す。

  【我が儘勝手な私訳】
    南岳衡山の山々は空に聳え立ち、その高さは天上まで届くかのよう、
    南岳衡山の急流は川の底を穿ち、それらの川が江南に流れ出ている。
    南岳衡山では、滝はもちろんのこと、松や杉まで常に湿気を帯びていて、
    南岳衡山では、夕陽が峰峰に懸かる頃、すぐに激しい暴風雨となってしまう。

○李白の「李白江夏送林公上人游衡岳序」や、杜甫の「望岳・第三首」詩の後に、王維の「方尊師帰南岳」詩を読むとホッとする。やはり、詩はこういうふうでなくてはならない。李白の序や杜甫詩があまりに難解だったからである。

○王維「方尊師帰南岳」詩の起句承句、
  山圧天中半天上    山は天中を圧し、半ば天上に、
  洞穿江底出江南    洞は江底を穿ち、江南に出づ。
は、南岳衡山の様子を言い得て妙である。それほど南岳衡山の山は高く、それほど南岳衡山の川は急流なのである。

○転句結句の、
  瀑布松杉常帯雨    瀑布と松杉、常に雨を帯び、
  夕陽蒼翠忽成嵐    夕陽は蒼翠、忽ち嵐を成す。
も、実によく南岳衡山の光景を伝えている。屋久島では、月に35日雨が降ると言うけれども、南岳衡山も、それと同じで、雨が多い。それに天気の急変するのが常である。そういう状況を実にうまく表現している。

○表題には、「方尊師帰南岳」とあるから、王維「方尊師帰南岳」詩は、直接、南岳衡山を詠ったものではないけれども、詩の表現は、的確に南岳衡山の様子を捉えている。

○この詩には、万人の南岳衡山に対する憧れ、畏敬がよく表現されている。そして、そういう聖地、南岳衡山へ帰る尊師への尊敬も十分尽くされていると言えよう。

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