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杜甫:清明二首其一

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○前回、杜甫「清明」詩を案内し、これで中国の検索エンジン百度の百度百科が載せる「清明」の各項目について、一通り触れたことになる。ただ、杜甫には別に、「清明二首」詩なるものがあって、どちらかと言うと、「清明」詩より、こちらの方が知られているのではないか。

○中国の検索エンジン百度の百度百科にも、もちろん、「清明二首」項目が存在する。

      清明二首
   《清明二首》是唐代伟大诗人杜甫的组诗作品。第一首,作者由清明景事兴感,叙写自己的悲惨遭
  遇,最后以高洁自守的志向收束;第二首,着重写飘泊之感,情感挚切深痛而饱满。两首诗在整体结构
  上有一种曲折变化之貌,回环错落之美。
     作品名称: 清明二首       创作年代: 盛唐
     作品出处: 《全唐诗》      文学体裁: 七言排律
     作者」 杜甫
   http://baike.baidu.com/view/8362219.htm

○今回は、杜甫の「清明二首其一」詩を案内したい。

  【原文】
      清明二首其一
         杜甫
    朝来新火起新煙
    湖色春光浄客船
    繍羽銜花他自得
    紅顔騎竹我無縁
    胡童結束還難有
    楚女腰肢亦可憐
    不見定王城旧処
    長懐賈傅井依然
    虚霑焦舉為寒食
    実藉君平売卜銭
    鐘鼎山林各天性
    濁醪麁飯任吾年

  【書き下し文】
      清明二首其一
         杜甫
    朝来新火もて、新煙を起こす、
    湖色春光、客船に浄し。
    繍羽の花を銜みて他れ自得し、
    紅顔は竹に騎るも、我れ縁無し。
    胡童の結束、還た有り難く、
    楚女の腰肢、亦た憐むべし。
    見ず、定王城の旧処、
    長く懐ふ、賈傅の井の依然たるを。
    虚しく霑ふ、焦舉の寒食を為すを、
    実に藉らん、君平の卜を売る銭に。
    鐘鼎山林、各々の天性、
    濁醪麁飯、吾が年に任せん。

  【我が儘勝手な私訳】
    清明節の朝、新しい火を使って、新しい火を起こし、
    湖水の色も春の陽光も、舟から見ると清らかである。
    美しい鳥が花を銜えてさも得意げに飛んで、
    子供たちは竹馬に乗り遊ぶけれども、年寄りの私とは無縁である。
    楚国の子供の服装は、また珍しいものであり、
    楚地の娘達の柳腰は、また何とも可愛らしい。
    現在、定王の城の旧址は残っていないけれども、
    賈誼の井戸が今でも残っているのは、昔を偲ぶ縁である。
    焦舉は寒食明けを楽しんだと言うが、私にご馳走はないし、
    厳君平が卜占を商売にして儲けたと言う話にあやかりたい。
    栄華富貴とか隠棲栖とかは、各人の先天的固有の属性に拠るもので、
    濁り酒と粗食こそが、私の天分だと今では諦めるしかない。

○杜甫の「清明二首其一」詩と「清明」詩とを、読み比べていただければ判ることだが、杜甫の作詩態度は終始一貫していて、少しもぶれることがない。杜甫詩の特長は、その創意工夫にあるし、真面目な作詩姿勢にあると言えよう。作者、杜甫の読者を楽しませようとする心配りは並大抵では無い。また、次から次へと抛り込まれる情報量も半端では無い。お陰で、随分、読者は勉強させられて閉口する。しかし、それが杜甫詩を読むことの楽しみでもある。

○前回にも触れたが、2013年6月、2014年6月と、二年続けて長沙を訪問した。長沙は魑魅魍魎の跋扈する地であって、南岳衡山の入り口に当たる。杜甫は、そういうことを十分考慮して作詩している。

○道家思想の、あのおどろおどろしさは、到底、黄河文明から誕生したものではない。おそらく、長江文明が産んだ思想こそが道家思想なのではないか。そういうものを感じ取ることが出来る地が長沙であるように、私には感じられた。

○杜甫がそういうものを存分に生かして作詩しているのが楽しい。何しろ、ここは屈原や賈誼の故地なのである。もちろん、杜甫がそういうことを意識して作詩していることは間違いない。

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